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【無料G検定学習】6章:ディープラーニングの手法①

更新日:6月14日


【無料G検定学習】6章:ディープラーニングの手法①

※教材内の図版は現在制作中です。対象箇所はネット検索等でご参照ください。



■畳み込みニューラルネットワーク

・画像データの扱い

・画像データの扱いの概要

ディープラーニングは、高度な計算を可能にする技術の1つです。

特に、隠れ層を増やしたニューラルネットワークがその基盤となっています。しかし、データの種類や特性に応じて、この基盤を最適化するアプローチが求められます。


例えば、画像データはその特性上、独自の取り扱いが必要です。今回は、画像データの特性と、それを効果的に扱うためのニューラルネットワークの構造について考えてみましょう。


・画像データの扱いのポイント

  • 画像データの特性

    • 2次元性: 画像データは縦横の2次元情報として数値が配置されている。

    • カラー情報: 一般的なカラー画像は赤色、緑色、青色のRGB情報を持つ。これを3次元として扱い、この奥行きを「チャンネル」と呼ぶ。(図6.1)

    • その他のカラー形式: RGB以外にもHSV(色相、彩度、明度)などの色の表現方法がある。

  • 画像データのニューラルネットワークでの扱い

    • 通常のニューラルネットワーク: 画像を一次元に分解して扱うが、位置関係の重要な情報が失われる可能性がある。

    • 畳み込みニューラルネットワーク (CNN): 画像データを2次元のまま扱うことができ、画像認識において特に効果的である。

  • CNNの研究状況

    • 画像認識はディープラーニングの中で非常に研究が活発である。CNNも進化を続け、多くのモデルやアプローチが存在する。


※図6.-1


画像データは、その特性から特別なアプローチを必要とします。

畳み込みニューラルネットワークは、その答えの1つとして提案されています。ディープラーニングの世界は日々進化しており、それに伴い、最適なモデルや手法も変わり続けます。


これからも、更なる技術の発展とともに、画像データのより高精度な認識が進んでいくことを期待しましょう。



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・CNNの基本形

・CNN(畳み込みニューラルネットワーク)の概要

CNN(畳み込みニューラルネットワーク)の基本構造は、私たち人間の視覚に関連する神経細胞の働きを模倣して設計されています。特に、私たちが視覚を通じて物事を認識する過程における2つの重要な細胞の働きを基に、初期のモデルが構築されました。


この発想を元に進化してきたCNNのモデルは、今日のディープラーニングにおいて、画像認識タスクなどに広く用いられています。

・CNN(畳み込みニューラルネットワーク)のポイント

  • 人間の視覚野の神経細胞とその働き

    • 単純型細胞(S細胞): 画像の特定の濃淡パターンや特徴を感知するします。

    • 複雑型細胞(C細胞): その特徴がどこに位置しているかに関わらず、同一の特徴として認識する。

  • 初期のCNNモデル

    • ネオコグニトロン

      • 発想者: 福島邦彦ら

      • 特徴: S細胞層とC細胞層を交互に組み込んだ多層の構造

      • 学習方法: add-ifsilent(微分を用いない方法)

    • LeNet

      • 発想者: ヤン・ルカン

      • 特徴: 畳み込み層とプーリング層の組み合わせて構成された構造

      • 学習方法: 誤差逆伝播法

  • ネオコグニトロンとLeNetの関連性

    • 共通点: 2つのモデルは基本的な構造が似ている。

    • 違い: 使用される層の名前や学習方法などが異なる。


※図6.-2

※図6.-3


CNNの進化は、人間の視覚機能をヒントにして始まりました。

ネオコグニトロンからLeNetへと、その構造や学習方法は進化を続けていますが、その根底には人間の視覚システムのメカニズムを模倣するという発想があります。


このような自然界からのヒントをもとにした技術の発展は、私たちの理解を深めるだけでなく、新しい可能性をもたらしてくれます。



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・畳み込み層

・畳み込み層の概要

畳み込みニューラルネットワーク(CNN)において、畳み込み層は中心的な役割を果たします。この層の名前「畳み込み」は、特定のフィルタを用いて画像の特徴を抽出するための処理を意味します。


この処理の特性として、フィルタの中の各値がどのように設定されるかによって、得られる特徴が変わります。また、畳み込み層の働きは、私たち人間の視覚システムにも通じる部分があります。特に、物体の位置が微妙に変わっても、その物体を同じものとして認識する能力に関係しています。


・畳み込み層のポイント

  • 畳み込み処理とは

    • フィルタ(またはカーネル): 画像から特徴を抽出するための小さなサイズのもの。(図6.4)

    • 操作の流れ:(図6.5)

      • フィルタを画像の一部分に重ね合わせる。

      • 画像とフィルタの各ピクセルの値をかけ合わせて、その総和を計算するします。

      • この操作を画像全体に対して行う。

    • フィルタの値: 特徴の抽出の方法を決定する。CNNの学習過程で調整される。

  • 人間の視覚との関連

    • 局所受容野: 人間の視覚野における特定の部分で、畳み込み処理と関連がある。

    • 移動不変性: 物体が少し位置を変えても、その物体を同一と認識する能力。

    • 畳み込み層の利点: 位置の微妙なズレに対して頑健なモデルを作ることができる。


※図6.-4/※図6.-5


畳み込み層は、CNNの特徴的な部分として、画像の特徴を効果的に抽出する役割を果たします。人間の視覚との類似性を持つこの層の働きによって、位置の微妙な変化にも強いモデルを構築することができます。


これにより、私たちの日常の中で経験するような、さまざまな視点や角度からの画像情報も、確実に処理されることになります。



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・プーリング層

・プーリング層の概要

CNNの構成要素として、プーリング層は特に注目に値します。

この層の役割は、画像のサイズを縮小することです。これにより、ネットワークが画像や特徴マップの局所的な情報を保持しつつ、全体のサイズを効率的に小さくすることが可能となります。


また、このプーリング処理は、畳み込み処理と同じく、画像の少しのズレに対する頑健性を強化する効果も持っています。さらに、プーリング層は単純な操作を行うため、学習すべきパラメータが存在しないのが特徴です。


・プーリング層のポイント

  • プーリング処理の目的

    • サイズ縮小: 画像や特徴マップのサイズを小さくするします。これはダウンサンプリングやサブサンプリングとも呼ばれる。

  • プーリングの種類

    • 最大値プーリング(maxpooling):

      • 小領域内での最大値を選択する。

      • 図6.6などで表される典型的な処理方法。

    • 平均値プーリング(averagepooling):

      • 小領域内の平均値を計算する。

  • プーリング層の特性

    • 頑健性: 畳み込み処理と同じく、少しの位置ズレにも強いモデルを形成できる。

    • 学習パラメータの不在: この層では特定のルールに基づいて処理を行うのみで、学習すべきパラメータは存在しない。


※図6.-6


プーリング層は、CNNにおいて画像や特徴マップのサイズを効果的に縮小することで、計算コストを削減しつつ、モデルの頑健性を維持します。畳み込み層と異なる特性を持つこの層は、複雑なネットワーク構造の中で、シンプルながらも非常に重要な役割を果たしています。


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・全結合層

・全結合層の概要

深いニューラルネットワークを構築する際、畳み込み層やプーリング層を組み合わせることが一般的ですが、これらの層の出力は2次元の特徴マップとして保持されます。

そこで、画像の認識タスクなどで、具体的なカテゴリーの確率を出力する際には、この2次元の情報を1次元の形式に変換する必要が出てきます。


そのため、畳み込みやプーリング処理の後段に「全結合層」と呼ばれる層を配置して、2次元の特徴マップを1次元の形式に整え、最終的な分類タスクを達成します。

そして、近年では、この全結合層を利用しない新しい方法として、特徴マップの平均値を取るGlobal Average Poolingという手法も広く採用されています。


・全結合層のポイント

  • 全結合層の役割

    • 2次元から1次元への変換:

      • 畳み込みやプーリング層からの2次元の特徴マップを、1次元のデータ形式に変換する。

      • 特徴マップを1列に整列させる処理を行う。

    • 最終的な分類タスクの達成:

      • 「ネコ」や「イヌ」などのカテゴリーへの分類タスクを実現する。

  • 近年の新しい手法

    • Global Average Pooling:

      • 全結合層を利用しない方法として、特徴マップの平均値を取り出す手法。

      • それぞれの特徴マップの平均値が、1つのユニット(ニューロン)の値として用いられる。


※図6.-7


全結合層は、深いニューラルネットワークの中で、2次元の特徴情報を最終的な1次元の出力形式に変換する重要なステップを担います。

近年の技術進化に伴い、全結合層の代わりにGlobal Average Poolingが採用されるケースも増えてきましたが、どちらの手法も、特徴情報を最終的な判断や分類に結びつける役割を果たしています。



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・データ拡張

・データ拡張の概要

画像認識の技術において、畳み込み層やプーリング層の導入は非常に効果的ですが、それだけでは足りません。なぜなら、現実の世界には無限のバリエーションの画像が存在し、それらを全て学習データとして揃えるのは非現実的だからです。


例えば、同じ物体でも、異なる角度や光の当たり方によって画像としての見え方が大きく変わります。この問題に対処するために「データ拡張」という手法が導入されました。

データ拡張は、手元の限られた画像データから新しい画像データを擬似的に生成する技術です。この手法によって、データの多様性を高め、モデルの汎用性を向上させることが期待されます。


・データ拡張のポイント

  • 画像認識の課題

    • 画像のバリエーション:

      • 同じ物体でも角度や光の当たり方によって見え方が異なる。

      • 実際の環境下での多様性をカバーするには多くのデータが必要。

  • データ拡張の目的と効果

    • データの「水増し」:

      • 既存の画像から新しい画像を生成することで、データの多様性を増やす。

    • 具体的な処理の例:

      • 画像をずらす、反転させる、拡大・縮小する、回転させる、斜めに歪ませる、切り取る、コントラストを変える。

      • 画像の一部を遮蔽するCutout、画像を合成するMixup、CutoutとMixupを組み合わせたCutMixなど。

    • 注意点:

      • データ拡張は、現実に存在する可能性のある画像のバリエーションを再現することが目的。

      • やみくもに全ての処理を適用すると、意味が逆転したり非現実的なデータが生成される可能性がある。


データ拡張は、画像認識モデルの訓練において非常に大きな効果を持つ手法です。

それにより、限られたデータから多様性を持つ新しいデータを生成し、モデルの汎用性を高めることができます。しかし、この手法を適切に利用するためには、生成するデータの現実性を常に考慮する必要があります。データ拡張の適切な利用は、高精度な画像認識モデルの構築に不可欠です。



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・CNNの発展形

・CNNの発展形の概要

画像認識技術の中心に位置するCNNは、その高い識別精度の追求の中で、多くのモデルやアプローチが登場してきました。

特に、畳み込み層とプーリング層を繰り返し積み重ねることによる深いネットワークの構築が1つの大きな動向となっています。


そして、これらの深いネットワークは数多くの課題や技術的な挑戦を伴いながらも、さまざまな最適化や工夫を導入することで、進化を続けています。

ここでは、発展的なCNNモデルと、さらなる最適化を目指す手法についてご紹介します。


・CNNの発展形のポイント

  • 初の大ブレーク「AlexNet」

    • 2012年のILSVRCで優れた結果を出した。

    • 畳み込み層とプーリング層を複数回繰り返す構造を持っている。

  • 深さを追求「VGG」

    • 16層まで積み重ねられた深いネットワーク。

    • 段階的に深さを増やす学習方法を採用。

  • 異なるフィルタサイズの導入「GoogLeNet」

    • Inceptionモジュールの導入により、異なるサイズの特徴を一度に捉える。(図6.9)

    • 10〜20層程度の深さが特徴。

  • 「超」深層の課題と解決策

    • 層を増やしすぎると認識精度が下がる。

    • 誤差が逆伝播しにくくなる問題が浮上。

    • Skipconnectionで「層を飛び越える結合」を導入。

  • Skipconnectionの成功例「ResNet」

    • 100層以上でも学習が可能。

    • Skipconnectionの導入により、伝播のしやすさやネットワークのアンサンブル学習が実現。

  • メモリ軽減のための手法「MobileNet」

    • Depthwise Separable Convolutionを採用し、計算量を削減。(※図6.-10)

    • 空間方向とチャネル方向の独立した畳み込み処理を行う。

  • ネットワーク構造の自動探索「NAS」

    • リカレントニューラルネットワークと深層強化学習を利用。

    • さまざまな最適化や工夫が導入されている。

  • 効率的なネットワーク「EfficientNet」

    • NASで探索された構造をベースに開発。

    • 転移学習にも有用で、多くのコンペティションで使用される。


※図6.-8

※図6.-9

※図6.-10


CNNの発展は、技術の進化とともに絶え間なく進行しています。

各モデルやアプローチは、画像認識のさらなる高精度化と効率性の追求の中で生まれてきました。この領域の研究と開発は、今後も我々の生活や産業に多大な影響を与えることでしょう。



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・転移学習とファインチューニング

・転移学習とファインチューニングの概要

近年、「超」深層のニューラルネットワークの学習が可能になりました。

しかし、この学習に伴う計算量は非常に大きくなってきており、個人のリソースだけでは十分な計算能力を持つことが難しくなってきました。そこで、すでに学習済みのネットワークを活用する方法、転移学習やファインチューニングが注目されています。


これらの方法は、特にImageNetで学習されたモデルのように、既に大量のデータセットで学習されたモデルをベースとして、新しいタスクに適応させる手法として用いられます。


・転移学習とファインチューニングのポイント

  • 計算量の増大

    • 超深層ネットワークの登場により、学習に必要な計算量が増加。

    • 一般的なGPUマシンでは十分な計算能力が得られない場面も。

  • 学習済みネットワークの活用

    • VGGやGoogLeNet、ResNetなどの大規模ネットワークの学習済みモデルが公開。

    • 新たな学習からではなく、これらのモデルをベースとして新しいタスクへの適応を考える。

  • 転移学習とは

    • 既存の学習済みモデルに新たな層を追加し、その層のみを学習する手法。

  • ファインチューニングとは

    • 既存の学習済みモデルをベースに、ネットワーク全体を再学習する手法。

  • ImageNetの重要性

    • ImageNetで学習したモデルは汎用的な特徴を持つため、多くのタスクでの利用が考えられる。


計算量が増大する現代の深層学習の環境において、転移学習やファインチューニングは非常に有効な手法となっています。

特に、大規模なデータセットで学習されたモデルは、新しいタスクへの適応能力が高いため、これらの手法の活用は今後もさらに進んでいくことでしょう。



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■深層生成モデル

・生成モデルの考え方

・生成モデルの考え方の概要

機械学習やディープラーニングといえば、文字や物体の「分類」を行う技術というイメージが一般的に広まっています。しかし、これらの技術は、単に分類するだけでなく、「生成」するタスクにも高い効果を発揮しています。


生成モデルと呼ばれるこのアプローチは、特に画像認識分野で重要です。

既存の画像データセットからその分布を学習し、その情報を元に新しい画像を生成する目的で用いられます。このような生成モデルはディープラーニングが導入される前から存在していましたが、ディープラーニングの高度な表現力により、その性能は飛躍的に向上しました。


特に、変分オートエンコーダ(VAE)と敵対的生成ネットワーク(GAN)という2つのモデルが、この分野で目覚ましい成果を上げています。


・生成モデルの考え方のポイント

  • 分類と生成

    • ディープラーニングは、単なる「分類」だけでなく「生成」のタスクにも適用される。

    • 生成モデルは特に画像認識分野で注目されている。

  • 生成モデルの基本

    • 生成モデルは、既存の画像データセットの分布を学習する。

    • 学習した分布を基に、新しい画像を生成することが目的。

  • ディープラーニングの影響

    • 生成モデルは以前から存在していたが、ディープラーニングの導入によって、その性能が大幅に向上。

    • 「深層生成モデル」と呼ばれる、ディープラーニングを用いた生成モデルが登場。

  • 代表的な生成モデル

    • VAE(変分オートエンコーダ)とGAN(敵対的生成ネットワーク)が特に有名。

    • これらのモデルは、画像の潜在空間を学習し、その空間から新しい画像を生成する。


生成モデルはディープラーニングの応用範囲を広げる重要な一角をなしています。

特に画像認識分野では、VAEやGANなどの先進的なモデルによって、新しい可能性が広がっています。

潜在空間から新たな画像を生成するこの技術は、今後さらに多くの応用例が出てくるでしょう。生成モデルの理解と活用は、ディープラーニングの未来をさらに明るく照らす鍵となることでしょう。



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・変分オートエンコーダ(VAE)

・変分オートエンコーダ(VAE)の概要

変分オートエンコーダ(VAE)は、オートエンコーダという基本的なニューラルネットワーク構造を進化させたモデルです。

通常のオートエンコーダは、入力データを一度隠れ層で圧縮し、その後、元の形に戻す(復元する)学習を行います。この隠れ層での圧縮表現が、データの特徴を抽出しています。


しかし、VAEでは少し異なるアプローチを採ります。VAEは、入力データ(例えば画像)を単純な圧縮表現に変換するのではなく、ある統計分布に変換します。

具体的には、その分布の平均と分散を学習します。この考え方の背景には、入力データが何らかの確率分布に基づいて生成されている可能性があるという仮説があります。この統計分布に基づいて、新しいデータを生成することができるのです。


・変分オートエンコーダ(VAE)のポイント

  • オートエンコーダとの違い(図6.11)

    • 通常のオートエンコーダは、入力データを圧縮表現に変換する。

    • VAEは、入力データを統計分布(平均と分散)に変換する。

  • 統計分布の学習

    • VAEは入力データが何らかの確率分布に基づいて生成されていると仮定。

    • この確率分布を学習することで、新しいデータの生成が可能。

  • エンコーダとデコーダの役割

    • エンコーダは、入力データを確率分布の一点、すなわち潜在変数に変換する。

    • デコーダは、この確率分布からサンプリングされた潜在変数を元に、新しいデータを生成する。


※図6.11-10


変分オートエンコーダ(VAE)は、単にデータを圧縮するだけでなく、データが生成される背景にある確率分布までをも考慮に入れた高度なモデルです。

この統計分布をうまく学習することで、オリジナルのデータセットにない新しいデータを生成することが可能になります。そのため、VAEは生成モデルの1つとして、多くの応用分野で注目されています。

このような先進的なアプローチにより、ディープラーニングと生成モデルの組み合わせは、未知のデータに対しても柔軟かつ高度な対応ができるようになってきました。



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・敵対的生成ネットワーク(GAN)

・敵対的生成ネットワーク(GAN)の概要

敵対的生成ネットワーク(GAN)は、生成モデルの一種であり、特に2つのニューラルネットワーク、すなわち「ジェネレータ(generator)」と「ディスクリミネータ(discriminator)」が相互に競い合いながら学習を進めます。


ジェネレータは、ランダムなベクトルを受け取り、新しい画像を生成する役割を果たします。一方で、ディスクリミネータは、入力画像が本物か偽物かを判定します。ここでの「偽物」は、ジェネレータが生成した画像のことを指します。


このようにして、ジェネレータはよりリアルな画像を生成できるように、ディスクリミネータはそれを見抜く能力を高めるように、それぞれが学習を進めていきます。そして、その結果として、非常に高品質な新しい画像が生成されることが多いです。

このGANの基本構造にさまざまな拡張がされており、それぞれが特定の用途に適しています。


※図6.12-11


・敵対的生成ネットワーク(GAN)のポイント

  • 基本コンポーネント

    • ジェネレータ:ランダムなベクトルを入力に、新しい画像を生成。

    • ディスクリミネータ:画像が本物か偽物かを判定する役割。

  • 学習の特性

    • ジェネレータは、ディスクリミネータを騙すように学習する。

    • ディスクリミネータは、偽物をしっかりと見抜くように学習する。

  • GANの拡張

    • DCGAN:畳み込みニューラルネットワークを利用し、高解像度の画像生成が可能。

    • Pix2Pix:特定の画像を別の画像に変換。ただし、対応する画像ペアが必要。

    • CycleGAN:画像のペアが不要で、一度変換した画像を元に戻せるように学習。


敵対的生成ネットワーク(GAN)は、ジェネレータとディスクリミネータが互いに競り合うことで高度な生成能力を持つように設計されています。

その魅力は、単なる画像生成だけでなく、多様な応用が可能な点です。DCGAN、Pix2Pix、CycleGANなど、様々な拡張がされており、それぞれが特定の問題解決に貢献しています。


このような進化を持続するGAN技術は、今後も多くの分野での応用が期待される高度なディープラーニング手法と言えます。



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■画像認識分野での応用


・画像認識タスク

・画像認識タスクの概要

画像認識タスクとは、コンピュータが入力した画像から特定の物体や事象を識別する技術の1つです。このタスクにおいては、多くの研究と進歩が見られており、特に深層学習(ディープラーニング)に基づくモデルが注目を集めています。


ILSVRC(ImageNet Large Scale Visual Recognition Challenge)という大規模な競技会でも、この技術の進化が顕著に見られます。

例えば、2012年にアレックスネット(AlexNet)が初めて優勝し、その後もInceptionモジュールを採用したGoogLeNet、単純な設計のVGG、Skipconnectionを用いたResNet、Attention機構を採用したSENetなど、さまざまなアイデアが導入されています。


これらのモデルはそれぞれ特有の工夫を凝らしており、高い認識精度を達成しています。


※図6.13-12


・画像認識タスクのポイント

  • 基本的な仕組み

    • 入力: 画像データ

    • 出力: 識別した物体クラスとその確信度

  • 主要なモデルとその特徴

    • AlexNet: ディープラーニングのモデルとして初めてILSVRCで優勝。

    • GoogLeNet: Inceptionモジュールを採用。、ネットワークの途中で認識結果を出力する補助機構がある。

    • VGG: 単純なネットワーク構造でありながら高精度。カーネルサイズが3×3と統一されている。

    • ResNet: Skipconnectionを導入し、超多層でも学習がうまくいく。人間の認識精度を超える場合も。

    • SENet: Attention機構を用いることで、特徴マップに重み付けを行う。

  • 課題と注意点

    • データセット: ILSVRCで使用されるImageNetには、多数の画像とラベルが含まれるが、ラベル付けの誤りも存在する。

    • 限定的な能力: たとえ高精度でも、モデルは設定されたクラス内でしか物体を識別できない。


画像認識タスクにおいては、技術の進展が目覚ましく、多くの高精度なモデルが研究されています。各モデルは独自の工夫や特長を持ち、その応用範囲も広がっています。


しかし、データセットの品質やモデルの汎用性など、まだ解決すべき課題も多く残っています。これからも進化する画像認識技術に注目しながら、その可能性と限界を理解することが重要です。



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・物体検出タスク

・物体検出タスクの概要

物体検出タスクは、人工知能(AI)が画像内の特定の物体とその位置を識別する技術です。

このタスクでは、物体の位置は矩形(四角形)の領域で表現され、その左上と右下の座標が出力となります。この技術はスマートフォンやデジタルカメラでの顔検出、自動車の安全機能での歩行者検出など、多くの応用例があります。

ディープラーニングが普及して以降、より高度な物体検出が可能になり、複数の物体クラスを一度に識別できるようになっています。


物体検出のアプローチには大きく分けて、位置と物体クラスの識別を2段階で行うモデルと、1段階で行うモデルが存在します。各モデルにはさまざまな特徴やメリット、デメリットがあり、その中でもR-CNN系列やYOLO、SSDが特に代表的です。


・物体検出タスクのポイント

  • 基本概念

    • 物体クラスの識別: 物体が何であるか(例:人、車、犬等)を識別する。

    • 位置の特定: 物体が画像内のどこに存在するかを矩形領域で出力する。

  • 応用例

    • 顔検出: スマートフォンやデジタルカメラでよく使用される。

    • 歩行者検出: 自動車の安全機能や監視カメラで用いられる。

  • モデルの種類

    • 2段階モデル: 位置の特定と物体クラスの識別を別々に行う。R-CNN、FastR-CNN、FasterR-CNNなど。

    • R-CNN: 初の2段階モデルで、SelectiveSearchで物体候補領域を抽出し、CNNとSVMでクラス識別する。

    • FastR-CNN: R-CNNの高速化版で、物体候補領域を一度に処理する。

    • FasterR-CNN: 更に高速化を果たし、RegionProposalNetworkを用いることで、SelectiveSearchを置き換えた。

    • 1段階モデル: 位置とクラスの識別を同時に行う。YOLO、SSDなど。

    • YOLO: 高速な処理が可能で、画像をグリッドに分割し、それぞれのグリッドで物体の有無と位置を識別する。

    • SSD: YOLOと似ているが、多層の特徴マップを用いることで、小さな物体も検出可能。


※図6.14

※図6.15


物体検出タスクは、現代社会で広く応用されているAIの1つです。用途やニーズに応じて、多くの種類のモデルが開発されています。高精度と高速性は、このタスクで求められる重要な要素であり、これらを兼ね備えたモデルの開発は今後も続くでしょう。

このような背景を理解することで、物体検出技術の進化や可能性をより深く理解できます。



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・セグメンテーションタスク

・セグメンテーションタスクの概要

セグメンテーションタスクとは、画像の各画素に対して何らかの識別を行う手法の総称です。特に、このタスクには大きく分けて「セマンティックセグメンテーション」、「インスタンスセグメンテーション」、そして「パノプティックセグメンテーション」の3種類があります。


セマンティックセグメンテーションは、画像全体に対して行い、同一クラスの物体(例えば、複数の歩行者や車)を1つのまとまりとして認識します。

一方で、インスタンスセグメンテーションは物体ごとに独立してセグメンテーションを行い、例えば、歩行者を一人一人分離するような処理が可能です。


そして、パノプティックセグメンテーションは、これらを組み合わせたような手法で、個々の物体は分離しつつ、背景(道路や建物など)は1つのクラスとしてまとめる手法です。


※図6.16-15


・セグメンテーションタスクのポイント

  • セグメンテーションの種類

    • セマンティックセグメンテーション: 同一クラスの物体を1つにまとめる。

    • インスタンスセグメンテーション: 物体を個別に識別する。

    • パノプティックセグメンテーション: 個別と全体を組み合わせる。

  • 技術的詳細

    • FCN(Fully Convolutional Network):全結合層を用いず、畳み込み層のみで構成。低解像度の問題を抱える。(図6.17)

    • SegNet:エンコーダとデコーダの構造を採用。特徴マップのサイズを調整しながら、より高精度なセグメンテーションを実現。

    • U-Net:医療画像診断にも利用。エンコーダとデコーダが密接に連携。

    • PSPNet:Pyramid Pooling Moduleを採用し、マルチスケールで特徴を捉える。

    • DeepLab:Atrous convolutionを用いて、計算量を抑えつつ広い範囲の情報を集約。

  • 問題と解決策

    • 解像度:SegNet(図6.18)やU-Net(図6.19)で解決。

    • 計算量:DeepLabでAtrous convolutionを採用して解決。

※図6.17

※図6.18

※図6.19


各種セグメンテーション手法は、コンボリューションニューラルネットワーク(CNN)の進化と共に高度化しています。


例えば、一般的なCNNには全結合層が存在しますが、FCNはそれを排除して畳み込み層のみで構成しており、その結果、セマンティックセグメンテーションに適した特性を持っています。

しかし、FCNだけでは解像度が粗くなる問題があり、それを解決するためにSegNetやU-Netといった手法が開発されました。さらに、広い範囲の情報を効率的に集約するために、Atrous convolutionと呼ばれる技術がDeepLabで採用されています。

以上のように、セグメンテーションタスクには多様な手法とその特性が存在します。選択する手法によって、タスクの精度や効率が大きく影響を受けるため、目的に応じて最適な手法を選ぶことが重要です。



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・姿勢推定タスク

・姿勢推定タスクの概要

姿勢推定タスクは、人体の関節位置、たとえば頭、足、手などを高精度で識別する技術領域です。この技術には多くの実用的な応用があります。監視カメラ映像からの異常行動検出やスポーツ映像の動作解析などがその代表例です。


この分野にはいくつかの主要な手法が存在し、それぞれ特定の問題に対して特化したアプローチを採っています。例えば、Convolutional Pose Machinesは単一の人物に対して高度に精密な姿勢推定を行います。


一方で、OpenPoseは画像内に複数人がいる場合にも各人物の関節位置を効率よく推定できます。これらの手法は、多層のCNN(畳み込みニューラルネットワーク)を活用し、信頼度マップや骨格間の位置関係といった情報を利用して精度を高めています。


※図6.20


・姿勢推定タスクのポイント

  • 信頼度マップの活用

    • 入力画像上で各関節の位置を信頼度マップとして出力。

    • 人体の構造や姿勢による位置の変動を吸収。

  • Convolutional Pose Machines(CPM)

    • CNNを多段構造で組み合わせる。

    • 逐次的な精度向上:各段階で信頼度マップを更新していく。

  • OpenPose(図6.21)

    • 複数人の姿勢推定が可能。

    • Parts Affinity Fields:関節間の相対的な位置関係を考慮。

    • 骨格の整合性:どの頭がどの肩と対応するかを明確化。

  • 多段階CNNの活用

    • 複数のCNNレイヤーを用いることで、より広範かつ複雑な特徴を抽出。

    • 人体全体の構造を考慮した推定が可能。


※図6.21


姿勢推定タスクは、非常に多くの応用領域で重要な役割を果たしています。

様々な手法が存在し、それぞれに長所と短所がありますが、共通しているのは高度な機械学習技術と精緻なモデリングが求められるという点です。


特に信頼度マップや多段階のCNNを駆使することで、非常に高い精度の姿勢推定が可能となっています。このような先進的な技術が更に進化することで、より多くの応用が生まれるでしょう。



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・マルチタスク学習

・マルチタスク学習の概要

マルチタスク学習は、1つの機械学習モデルが複数のタスクを同時に処理する方法論です。特に、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)がこの分野で幅広く活用されています。


ネットワークの出力層や構造を調整することで、1つのモデルが多様な問題に対応することができます。例えば、FasterR-CNNやYOLOは物体のクラスを識別しながらその位置も特定できるため、マルチタスクと言えます。


更に進んだ手法としてMaskR-CNNがあり、これは物体検出だけでなくセグメンテーション(物体を画素レベルで区別する技術)も同時に行える能力を持っています。(図6.22)

このような多機能性は、例えば自動運転車や医療画像解析など、多くの実用的な応用につながっています。


・マルチタスク学習のポイント

  • 1つのモデルで複数のタスク

    • 出力層やネットワーク構造を工夫。

    • 異なる問題領域に柔軟に対応可能。

  • FasterR-CNNとYOLO

    • 物体のクラス識別と位置特定が一度に行われる。

    • 両方のタスクを効率よく行うための最適化手法。

  • MaskR-CNN

    • FasterR-CNNをベースとし、さらにセグメンテーションも可能。

    • インスタンスセグメンテーション:個々の物体ごとにセグメンテーションを行う。

    • セグメンテーション結果は、細かい画素レベルでの識別が行われる。

  • 応用領域

    • 自動運転車:物体認識と道路状況の解析。

    • 医療画像解析:病変部位の特定と診断情報の一元化。


※図6.22-21


マルチタスク学習は、1つのモデルで複数の問題を解決する力強いアプローチです。これにより、リソースを効率よく使いながら、高度な問題解決が可能になります。

FasterR-CNNやYOLO、MaskR-CNNなど、各種の先進的なモデルが登場していますが、その共通点はネットワーク構造や出力層を工夫して多機能性と高性能を両立している点です。

これからも、このようなマルチタスク学習の進化が期待されますし、多くの実用的な応用がさらに拡がるでしょう。



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■音声処理と自然言語処理分野


・時系列データの扱い

・時系列データの扱いについて

時系列データは、時間に依存した変化を有するデータ形式です。日常生活でよく見かける例としては、電車の混雑状況や電気使用量、さらには世界の人口の推移などがあります。これらの情報は、過去の状態が未来の状態に影響を与えるという共通の特性を持っています。


ニューラルネットワークを用いて時系列データから何らかの予測をする場合、データの時間的な流れをどう表現するかが重要なポイントとなります。単純に時系列データを一次元のベクトルとして入力する方法もありますが、これにはいくつかの制約が存在します。


特に、過去の影響が非常に長期にわたる場合や、影響を与える過去の時点が明確でない場合は、その取り扱いが難しくなります。このような課題を解決するために、時系列データ専用のネットワーク設計が求められます。


具体的なデータの例として、本節では音声データとテキストデータについて説明します。これらもまた、過去のデータが未来の状態に影響を与える形式であり、動画データも同様に時系列データとして扱うことが可能です。


・時系列データのポイント

  • 時系列データの特性

    • 過去の状態が未来に影響を与える。

    • 周期性がある場合と、緩やかに上昇・下降する場合がある。

  • ニューラルネットワークと時系列データ

    • 単純なベクトルとしての入力は限界がある。

    • 長期的な影響や不明確な影響ポイントが問題。

  • データの具体例

    • 音声データ:時間依存性が明確。

    • テキストデータ:時間と共に文字や単語が入力される。

    • 動画データ:画像データの連続として時系列データ。

  • 課題

    • 過去の影響が非常に長期にわたる場合に取り扱いが難しくなる。

    • 影響を与える過去の時点が明確でない場合に取り扱いが難しくなる。

  • 解決策

    • 時間軸に沿ったデータ入力。

    • 時間情報を反映できるネットワーク設計。


時系列データは、私たちの日常生活やビジネス、科学研究など、多くの場面で重要な役割を果たしています。しかし、その特性上、過去のデータが未来に与える影響を適切にモデル化することが必要です。単純な方法でこれを行うには限界があり、データの性質をしっかりと理解した上で、時系列データに特化したネットワーク設計が不可欠です。音声データやテキストデータ、さらには動画データも含めて、これらの時系列データを適切に扱うことで、より精度の高い予測や解析が可能になるでしょう。




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・音声データの扱い

・音声データの扱いについて

音声データは、本質的には空気の振動として波形で存在しているアナログデータです。時間が経過するごとに変化します。このようなアナログな音声データをコンピュータで分析や処理をするためには、デジタルデータに変換する必要があります。この変換過程をA-D変換(Analog-to-Digital Conversion)と呼びます。一般的なA-D変換手法としては、PCM(Pulse Code Modulation)が広く用いられています。PCMでは、連続的な音波をサンプリングと呼ばれるプロセスで一定間隔ごとに切り取り、それを量子化と符号化という手続きを経て、デジタルデータに変換します。


さらに、音声データは様々な周波数成分を含む複雑な波形で構成されています。この周波数成分を分析するためには、高速フーリエ変換(FFT)という手法が一般的に使われます。FFTによって、音声データはその周波数成分に分解され、多くの情報が明らかにされます。


音には「高さ」「長さ」「強さ」「音色」といった属性がありますが、特に音色は音を識別する上で非常に重要な要素です。音色の違いは、主に周波数スペクトルにおけるスペクトル包絡の違いとして表れます。スペクトル包絡を効率よく抽出するためには、MFCC(Mel-Frequency Cepstrum Coefficients)という手法が広く使用されています。


・音声データの扱いのポイント

  • A-D変換

    • サンプリング: 一定時間ごとに音波を切り取る。

    • 量子化: 切り取られた音波を近似値で表現。

    • 符号化: 量子化された値をビット列で表現。

  • 周波数分析

    • 高速フーリエ変換(FFT): 音声データを周波数成分に分解。

    • 周波数スペクトル: FFTによって得られる音声データの周波数成分。

  • 音の属性

    • 音色: 音を識別する重要な要素。

    • スペクトル包絡: 音色の違いを表す。

    • MFCC: スペクトル包絡を抽出する手法。

  • 音声認識

    • 隠れマルコフモデル(HMM): 長らく音声認識の標準手法とされている。

    • 音素: 音の最小単位で、HMMで学習される。

    • 音素列の対応辞書: 単語と音素列の対応を示す。


音声データはその性質上、時間に依存した複雑な情報を持っています。

これを効率よく処理し、より高度な分析や予測を行うためには、様々な技術や手法が必要とされます。


A-D変換から始まり、FFTやMFCCなどを通じて、音声データはその本質をより明確に表す形に変換されます。これによって、例えば音声認識などの高度な処理が可能になります。

したがって、これらの基礎的な技術や理論を理解することは、音声データを有効に利用するために非常に重要です。



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・テキストデータの扱い

・基本単位「単語」から始まるテキストデータの扱い方

テキストデータをコンピュータで処理する際、その基本単位となるのが「単語」です。

一般に、単語は文章や文の最小の意味を持つ要素として認識されます。単語を連ねることで、より大きな文脈や意味を形成することができます。

このように単語を並べたものを「n-gram」と呼ぶのですが、この「n」は単語を何個並べるかを示しています。

さらに、このn-gramにはいくつかの種類があります。

例えば「ユニグラム」は1つの単語を、バイグラムは2つの単語を、トライグラムは3つの単語をそれぞれ指します。


・基本単位「単語」から始まるテキストデータの扱い方のポイント

  • 基本単位:単語

    • 最小の意味を持つ要素。

    • 文章や文を形成する基本要素。

  • n-gram

    • n個の単語を連ねる。

    • ユニグラムは1つの単語、バイグラムは2つの単語、トライグラムは3つの単語。



・テキスト分析の高度な手法「Bag-of-Words(BoW)」について

文や文章を単純な単語の列として表現することもできますが、より多くの文や文書を効率よく分析するためには、「Bag-of-Words(BoW)」という手法が広く用いられています。

この方法では、文の中に出現する単語をその頻度と共に記録し、単語の出現順序は無視します。そのため、n-gramとBoWを組み合わせた「Bag-of-n-grams」という手法も存在します。


・テキスト分析の高度な手法「Bag-of-Words(BoW)」のポイント

  • Bag-of-Words(BoW)

    • 文内の単語をその頻度で表現。

    • 単語の出現順序は無視。

  • Bag-of-n-grams

    • n-gramとBoWの組み合わせ。

    • 局所的な出現順序も考慮可能。



・単語埋め込み(wordembedding)の概要

自然言語処理において、単語の表現方法は非常に重要です。

伝統的な「ワンホットベクトル」は、非常に高次元で情報が疎な形式とされています。


この局所的な表現から、より意味的な関係を持たせるために「単語埋め込み(word embedding)」と呼ばれる手法が広く採用されています。その代表的な手法として「word2vec」があります。これは、単語の意味をその周囲の単語との関係性で捉えるものです。


ここでは、word2vecの基本原理からその派生形であるfastText、そして文脈を考慮したELMoまで、単語埋め込みの多角的な側面をまとめて記載します。


・単語埋め込み(wordembedding)のポイント

  • ワンホットベクトルとその限界

    • 高次元性: ワンホットベクトルは非常に高次元である。

    • 情報の疎性: 有用な情報が少ない。

  • 単語埋め込みの必要性

    • 意味の近さ: 単語同士の意味的な距離を測定可能。

    • 次元の削減: 低次元で意味豊かな表現が可能。

  • word2vecの原理

    • 分布仮説: 「単語の意味は、その周辺の単語によって決まる」という考え方。

    • モデルの種類: スキップグラムとCBOWの2つのモデルが存在。

  • fastTextとその特徴

    • 部分文字列の考慮: 単語を構成する部分文字列も学習に利用。

    • 訓練速度: fastTextは学習が高速。

  • 文脈を考慮した単語埋め込み

    • ELMo: 文脈に基づいて単語の意味を動的に生成。

    • 多義性の解消: 文の文脈を使用して、多義語の意味を正確に把握。


単語埋め込みは、自然言語処理における単語の表現方法を革新的に改善しています。

特にword2vec、fastText、ELMoといった手法は、単語の意味をより豊かに、そして文脈に応じて表現する能力に優れています。これらの技術を理解し活用することで、より高度な自然言語処理が可能となります。



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・リカレントニューラルネットワーク(RNN)

・リカレントニューラルネットワーク(RNN)について

リカレントニューラルネットワーク(RNN)は、言語モデル(Language Model、LM)を始めとしたさまざまな分野で使用される機械学習の一手法です。


特に、自然言語処理や音声処理での利用が広く、事前学習モデル(Pretrained Models)の基礎技術としても非常に重要です。RNNは、通常のニューラルネットワークとは異なり、過去のデータ(状態)を反映できる構造を持っています。この特性が、時系列データや自然言語などの時間依存性を持つデータの解析に特に有用です。


・リカレントニューラルネットワーク(RNN)のポイント

  • 基本概念

    • 時間依存性の学習: RNNは時系列データのパターンを学習することができる。過去のデータを考慮することで、未来の出力をより精度高く予測する。

    • 隠れ層の役割: 通常のニューラルネットワークでは、隠れ層がデータの特徴を抽出する。RNNでは、これに加えて過去の隠れ層からの情報も考慮に入れる。

  • 技術的特性

    • BackPropagation Through Time(BPTT): 時間に沿って誤差を逆伝播させる手法。過去の情報がどれだけ現在の出力に影響しているかを学習する。

    • 多層化: 1つのRNNの出力を別のRNNの入力とすることで、多層のRNNを構築することができる。

  • 応用例

    • 音声認識: RNNは、音声データを時間に沿って処理し、その結果として音素(音の単位)を出力する。これによって音声認識が可能となる。

    • Connectionist Temporal Classification(CTC): 音声データと音素の数が必ずしも一致しない問題に対処する手法。出力候補に空文字を加え、連続して同じ音素が出力された場合は、それを1つの音素として処理する。


※図6.23-22


RNNは、その柔軟な時間依存性の表現能力と高度な学習機能により、多くの応用分野で重要な役割を果たしています。

しかし、構造が複雑であるため、学習には計算コストがかかることや、長い時間依存性を持つデータの扱いが難しいという課題もあります。それでも、このような課題に対処するための多くの研究が進行中であり、今後もその進化が期待されています。



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・LSTM(Long Short-Term Memory)について

・LSTM(Long Short-Term Memory)の概要

再帰型ニューラルネットワーク(RNN)は時間依存性のあるデータを効果的に処理できるよう設計されていますが、そのままの形ではいくつかの課題に直面します。

そこでLSTM(Long Short-Term Memory)という派生型が開発されました。


LSTMは、勾配消失問題と呼ばれる課題に対処するとともに、時系列データの特性に合わせた最適化が行われています。このテクノロジーは、特に音声認識やテキスト解析など、長期的な依存関係が必要な場合に非常に有用です。


LSTMは基本的なRNNのアーキテクチャを拡張しており、独自の「ブロック」構造が追加されています。このブロック内には、情報を長期間保持するためのセルと、その情報の流れをコントロールするためのゲートが備わっています。(図6.24)

これにより、時系列データに特有の問題も効率的に解決することができます。


・LSTM(Long Short-Term Memory)のポイント

  • 勾配消失問題への対応

    • 通常のRNNでは、過去の情報を反映させる際に勾配消失が起きやすい。

    • LSTMでは、セル(CEC:Constant Error Carousel)を用いて勾配消失を防ぐ。

  • 入力重み衝突と出力重み衝突の解消

    • RNNでは時系列データ特有の問題である入力重み衝突と出力重み衝突が発生する。

    • LSTMでは、入力ゲートと出力ゲートを用いてこれらの問題を解決。

  • 情報の保持と消去の最適化

    • LSTMには、情報を適切なタイミングで保持または消去するゲートが存在。

    • 忘却ゲートは情報の過剰な保持を防ぐ役割を果たす。

  • 計算量

    • LSTMは高度に最適化されているが、その結果として計算量が大きい。

    • 簡易版としてGRU(Gated Recurrent Unit)も存在し、計算量を削減できる。


※図6.24

※図6.25


LSTMは、時間依存性を持つ複雑なデータセットに対する多くの問題を解決しています。

独自のセルとゲート機構によって、時系列データの分析精度が大幅に向上するため、音声認識や自然言語処理など多くの応用例が存在します。


ただし、その高度な機能は計算量の増加というトレードオフがあり、その点についてはGRUなどの簡略化されたモデルも選択肢として考慮する価値があります。とはいえ、LSTMの持つ高い柔軟性と機能性は、多くの場面でその利用価値を証明しています。



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・Bidirectional RNN(BiRNN)

・Bidirectional RNN(BiRNN)の概要

時系列データを解析する際には、過去の情報だけでなく未来の情報も考慮することが、より精度の高い予測につながる場合があります。特に、時間情報が欠けていたり、自然言語処理で文脈を理解する必要がある場合などにおいて、このようなアプローチが有効です。


通常のRNN(再帰型ニューラルネットワーク)は、過去のデータから未来のデータへと一方向でしか学習を進めることができません。それに対してBidirectional RNN(BiRNN)は、過去から未来へ、そして未来から過去へと、双方向での学習が可能です。


具体的には、1つのモデル内で2つの独立したRNNが働き、それぞれが過去と未来の情報を学習します。このようにして、BiRNNは多角的な情報処理を実現し、より高度な予測や解析が可能になります。


・Bidirectional RNN(BiRNN)のポイント

  • 双方向性の利点

    • 通常のRNNは一方向の学習しかできないため、未来の情報を活用できない。

    • BiRNNは過去と未来、両方の方向から情報を学習できるため、より精度の高い予測が可能。

  • 応用例

    • 時間情報の欠落がある場合: 過去と未来の情報を用いて補完と予測ができる。

    • 自然言語処理: 文脈を理解する際に前後の単語を両方考慮できるため、より高度な解析が可能。

  • モデルの構造

    • BiRNNは1つのモデル内で2つのRNNを組み合わせて構成されている。

    • それぞれのRNNは過去用と未来用として独立して動作する。

    • 複雑な構造ではなく基本的なRNNを2つ用いるだけであるため、実装が容易。


※図6.26


Bidirectional RNN、通称BiRNNは、一方向の学習に限定されがちな通常のRNNの問題点を補完する形で設計されています。過去だけでなく未来の情報も活用することで、例えば時間情報が欠落した場合の予測や、自然言語処理における文脈の理解において、非常に有用なモデルと言えます。


その構造は、見かけによらず非常にシンプルであり、基本的なRNNを2つ組み合わせるだけなので、取り入れやすい技術とも言えるでしょう。このような特性から、BiRNNは多くの応用分野でその価値を証明しています。



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・エンコーダ-デコーダ

・エンコーダ-デコーダの概要

時系列データの解析では、入力が時系列データでありながら、出力が1つの値やラベルとなる場合が多く見られます。しかし、入力が時系列であれば出力も時系列であるようなシナリオもあります。


このような問題を解決するモデルがエンコーダ-デコーダ(Sequence-to-Sequence、またはSeq2Seqとも呼ばれます)です。特に、自然言語処理分野でよく研究されており、その代表例としては機械翻訳があります。

このモデルは、基本的には2つのRNNを組み合わせたもので、1つは入力データをエンコード(符号化)し、もう1つはそのエンコードされた情報をデコード(復号化)して出力を生成します。


名前の通り、モデルは大きくエンコーダとデコーダの2つの部分からなります。エンコーダが入力時系列データを符号化して、その符号化されたデータをデコーダが用いて出力時系列データを生成します。出力も時系列なので、一度にすべてを出力するわけではありません。デコーダは、1つ1つの出力を次のステップの入力として用います。


また、最近ではRNNだけでなく、例えば画像説明生成タスクであるImageCaptioningでは、エンコーダにCNNが、デコーダにRNNが用いられるなど、多様なニューラルネットワークが活用されています。


・エンコーダ-デコーダのポイント

  • エンコーダ-デコーダの特徴

    • 入出力の形状: 入力と出力が両方とも時系列データであること。

    • 構造: 2つのRNN(エンコーダとデコーダ)を組み合わせて使用。

  • 応用例

    • 機械翻訳: 入力文と出力文の長さが必ずしも一致しない場合に有用。

    • ImageCaptioning: CNNで画像をエンコードし、RNNで説明文を生成。

  • 動作の仕組み

    • エンコーダ: 入力データを符号化(エンコード)する。

    • デコーダ: エンコードされたデータを基に、出力データを復号化(デコード)する。

  • 出力生成の工夫

    • 時系列: 出力は時系列であるため、一度に全て出力するわけではない。

    • ステップごとの処理: デコーダは1つ1つの出力を次のステップの入力として利用。


エンコーダ-ディコーダモデルは、入力と出力が両方とも時系列であるような特殊な問題設定に対応するために開発されました。このモデルの美点は、2つのRNNを効率的に組み合わせることで、複雑な時系列データの変換を実現する点にあります。


そして、このアプローチはRNNに限定されず、他の種類のニューラルネットワークにも適用可能です。機械翻訳や画像説明生成といった多様な応用例が存在することから、その汎用性と有用性が証明されています。



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・Attention

・Attentionの概要

RNN(Recurrent Neural Network)は確かに多くの時系列データ解析タスクで素晴らしい成果を上げていますが、それでも1つの状態から次の状態に移行するとき、過去の状態がどれだけ影響を与えるかという観点は直接考慮されていません。


そこで登場するのが、Attentionと呼ばれるテクニックです。

この手法は、過去の状態に「重み」をつけて、その加重平均を取ることで、出力の精度を向上させています。特に、機械翻訳などで見られるように、Attentionの導入によって、長い文でも情報を適切に保持し、高精度な翻訳が可能となっています。


加えて、Attention機構を用いると、どの入力がどれだけ出力に寄与しているかを可視化できるという利点もあります。この可視化能力は、モデルの解釈性を高め、エラーの診断にも寄与します。


・Attentionのポイント

  • Attentionの核心

    • 時間の重み: 過去の隠れ層の状態に対して重みを計算し、それを用いて出力を生成する。

    • 加重平均: これらの重みを用いて過去の隠れ層の状態の加重平均を取り、それを出力の計算に用いる。

  • 応用例とその影響

    • 機械翻訳: 長い文でも情報を適切にキャッチし、高精度な翻訳が可能。

    • ImageCaptioning: 画像の特定の部分に「注目」して説明文を生成する。

  • 可視化と解釈性

    • 入出力の対応関係: Attentionの重みを用いて、どの入力がどれだけ出力に寄与しているかを可視化できる。

    • 診断と調整: 可視化を通じて、モデルが意図しない学習をしていないか確認でき、必要に応じて調整も容易になる。


※図6.27


Attentionは、RNNの限界を補完し、特に時系列データや長いシーケンスデータに対する解析能力を大幅に高める魅力的なテクニックです。出力に対する各入力の重要度を明確に把握することで、モデルの解釈性も向上させています。


このような特性によって、Attentionは多くの応用分野で欠かせない技術となっています。

それゆえに、Attentionの理解と適用は、データサイエンス、特に自然言語処理や画像認識の分野でますます重要になるでしょう。



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・トランスフォーマー(Transformer)

・トランスフォーマー(Transformer)の概要

RNNは時系列データ処理の多くの場面で非常に有用ですが、その構造上の限界も確かに存在しています。例えば、データを時間軸に沿って1つずつ順番に処理する必要があり、それが並列計算の障壁となっています。


また、長い文章では先頭にある単語の影響が後半に出てくる単語に及ぼす影響が次第に薄れてしまう問題もあります。このようなRNNの課題を解決する形で、2017年にトランスフォーマー(Transformer)という新しいニューラルネットワークが登場しました。


トランスフォーマーは、特にニューラル機械翻訳において画期的な改善をもたらしました。

RNNとは違い、Self-Attentionと呼ばれる新たな機構を採用しており、これによって並列計算が容易になり、遠く離れた単語同士の関係も効率よく捉えられるようになっています。


・トランスフォーマー(Transformer)のポイント

  • トランスフォーマーの革新性

    • Self-Attention機構: RNNを排除し、Self-Attention機構を新たに導入。これが並列計算の容易化と高速な学習を可能にしている。

    • Source-Target Attention: 既存のAttention機構も組み合わせて用いることで、入力文と出力文の関係性もしっかりと捉えることができる。

  • 処理速度と並列計算

    • 並列計算の可能性: ネットワーク全体がSelf-AttentionとSource-Target Attentionから成るため、並列計算が容易になっている。

    • 高速な学習: 上記の並列計算の利点により、RNNに比べて大幅に学習速度が向上している。

  • 応用例と影響

    • ニューラル機械翻訳: 精度が大幅に向上し、Googleの翻訳サービスなどでも採用されている。

    • 他のNLPタスク: Self-Attentionの利点は、機械翻訳だけでなく、他の自然言語処理タスクにも拡張可能であること。


トランスフォーマーは、RNNが持つ処理速度の遅さや長いシーケンスデータの扱いにくさといった問題を巧妙に解決しています。


特にSelf-Attention機構の導入は、並列計算を可能にし、それが高速なモデル学習に繋がっています。このような多角的な改善により、トランスフォーマーは現在、機械翻訳はもちろん、多くの自然言語処理タスクにおいても非常に有望な手法となっています。これからもその影響力は拡大することでしょう。



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・Self-Attention(自己注意機構)

・Self-Attention(自己注意機構)の概要

Self-Attention(自己注意機構)は、特に自然言語処理において非常に有用なメカニズムです。

この技術は、Source-Target Attentionが入力文と出力文の単語間の関係を計算するのに対して、Self-Attentionは入力文内、あるいは出力文内の単語間の関連性を詳細に計算します。


具体的には、各単語の分散表現を、その文内の他の単語の分散表現と自身のSelf-Attentionの値を考慮しながら更新します。このようにして文脈を適切に反映した高品質な分散表現が得られるわけです。


・Self-Attention(自己注意機構)のポイント

  • 関連性の計算

    • 入力文内または出力文内の単語間の関連度を計算。

    • 文脈を考慮して自身の分散表現を更新。

  • 計算速度

    • RNNでは複数ステップが必要だが、Self-Attentionは1ステップで全ての関係を計算。

    • 並列計算が可能で高速。

  • 位置情報の考慮

    • 語順の情報が失われる問題を解決するために、位置エンコーディング(Positional Encoding)を追加。

    • これにより単語の位置情報や単語間の位置関係も考慮される

  • トランスフォーマーでの利用

    • エンコーダとデコーダ両方で使用されているが、それぞれに独特な特性がある。

    • エンコーダは文全体を、デコーダは先頭から順番に計算(未来の情報は未使用)。


以上のように、Self-Attentionは非常に多機能かつ高効率な手法であり、それが多くの自然言語処理のタスクで積極的に用いられています。特にトランスフォーマーモデルでは、このSelf-Attention機構がキーとなっており、多くの派生型モデルやアプリケーションにその影響を広げています。



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・自然言語処理におけるPre-trainedModels

・自然言語処理におけるPre-trainedModelsの概要

自然言語処理(NLP)の分野でも、画像認識技術のように「事前学習モデル」の活用が進んでいます。画像認識では、大規模なデータセットを使って事前に訓練されたVGG16などのモデルがあり、それを基に小規模なデータセットで高度な認識能力を発揮できるように「転移学習」が行われています。

このようなアプローチは自然言語処理においても同様に有効であり、2018年にはこのコンセプトがさまざまなNLPの応用タスクで成功を収めるGPTやBERTといったモデルが登場しました。


特に注目すべきは、GPTやBERTは事前学習したモデルそのものを応用タスクで直接使用できる点です。これに対して、word2vecやELMoのような既存のモデルは、大規模なデータで事前学習は行っていますが、応用タスクにはそのまま適用することができず、タスク専用のニューラルネットワークを新たに設計する必要がありました。この違いにより、GPTやBERTは多くの研究や実用例で「事前学習モデル」として特に注目されています。


・自然言語処理におけるPre-trainedModelsのポイント

  • 事前学習と転移学習の一般的な活用

    • 画像認識:VGG16など、大規模データで訓練した後、特定のカテゴリの小規模なデータで転移学習を実施。

    • 自然言語処理:GPTやBERTが2018年に登場し、多様なNLPタスクで高精度に解くことが確認されている。

  • 応用タスクでのモデルの利用可能性

    • GPTやBERT:事前学習したモデルそのものを応用タスクで使用できる。

    • word2vecやELMo:応用タスクにはそのまま適用できず、新たなモデル設計が必要。

  • 事前学習モデルの定義

    • GPTやBERTは特に「事前学習モデル」として注目されている。

    • word2vecやELMoは通常、このカテゴリには含まれない。


事前学習モデルは、画像認識だけでなく自然言語処理においても非常に有用な手法となっています。特にGPTやBERTのようなモデルは、事前学習したモデルを応用タスクにそのまま利用できるという大きな利点を持っています。

これにより、開発の効率が上がるだけでなく、多様な応用タスクで高い性能を発揮する可能性が広がっています。この動向を理解しておくことは、自然言語処理の技術やその応用に関わる全ての人々にとって、非常に価値のある知識と言えるでしょう。



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・GPT

・GPT(GenerativePre-Training)の概要

GPT(Generative Pre-Training)は、OpenAIによって開発された事前学習モデルです。このモデルは、大規模なコーパスに基づいて言語モデルの訓練を行います。その際には、トランスフォーマーのデコーダと似た構造を持つニューラルネットワークが使用されています。

特に興味深いのは、このGPTは事前学習したそのままのモデルを、多種多様な自然言語処理タスク、例えば評判分析や質問応答などで使用できるという点です。


言語モデルとしての事前学習段階では、過去の単語列から次の単語を予測するという形で学習が行われます。それに続いて、例えば評判分析では、与えられた文をGPTに入力して、文の極性(ポジティブ、ネガティブ、ニュートラル)を判定するなどの応用がされます。


・GPT(GenerativePre-Training)のポイント

  • モデルの基本構造

    • トランスフォーマーのデコーダに似た構造。

    • Self-Attentionメカニズムを利用。

    • エンコーダがないため、Source-Target Attentionは不要。

  • 事前学習と転移学習

    • 事前学習段階:過去の単語列から次の単語を予測。

    • 転移学習段階:評判分析などの応用タスクでそのまま使用可能。

  • 応用可能なタスクの多様性

    • 評判分析:文の極性を判定。

    • 自然言語推論(NLI):文の含意関係を認識。

    • 質問応答:選択肢から適切な回答を選ぶ。

    • 意味的類似度判定:文が同じ意味であるかを判定。

    • 文書分類:文書がどのクラスに属するかを予測。

  • 評価ベンチマーク

    • General Language Understanding Evaluation(GLUE)ベンチマークが存在。

    • 世界中の研究者がこのデータセットで精度を競っている。


※図6.28


GPTはその多様な応用可能性と高度な言語理解能力で注目されています。特に、1つのモデルで多くの自然言語処理タスクに対応できる点が画期的です。


さらには、GLUEベンチマークなどでその性能が評価され、多くの研究者がこのモデルを活用しています。そのため、自然言語処理に関わる研究や業務において、GPTの動向を理解しておくことは非常に有益です。このような先進的なモデルが今後どのように進化していくのか、楽しみに見守っていきたいところです。



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・BERT

・BERTの概要

BERT(Bidirectional Encoder Representations from Transformers)は、Googleが開発した先進的な言語モデルの1つです。このモデルは、トランスフォーマーのエンコーダ構造を活用しています。


BERTは特に「Masked Language Model(MLM)」と「Next Sentence Prediction(NSP)」という2つの特有の事前学習タスクで訓練されます。このような独自の訓練方式により、BERTは文全体を両方向から理解する能力を持っています。これによって、一般的な言語モデルよりもさらに多くの文脈を捉え、高度な言語理解タスクを効率よく処理できるのです。


図6.29には、BERTの事前学習とその後の転移学習の概要が示されています。

事前学習では、特別なトークンである[SEP]と[CLS]を使って文を整理し、その後でMLMやNSPといったタスクを解きます。転移学習では、この事前訓練されたBERTモデルを、評判分析や質問応答、品詞タグ付けなど、多様な応用タスクで活用できるのです。


※図6.29


・BERTのポイント

  • 事前学習タスク

    • MLM (Masked Language Model): 文中の単語をランダムにマスク(隠す)し、そのマスクされた単語を正確に予測させる。

    • NSP (Next Sentence Prediction): 二つの文が連続しているかどうかを判定させる。

  • 特別なトークン

    • [SEP]: 二つの文を区切るトークン。

    • [CLS]: 文全体の情報を要約するトークン。転移学習でよく用いられるます。

  • 双方向性

    • 一般的な言語モデルは過去の情報しか利用できないが、BERTは未来の情報も同時に考慮できる。

  • 転移学習の応用範囲

    • 評判分析、質問応答、品詞タグ付けなど、多様なNLPタスクでの利用が可能。


BERTの特長は、高度な事前学習タスクと双方向性、そして多様な転移学習の応用可能性にあります。このような特性が組み合わさることで、BERTは言語理解の新たなスタンダードを築いています。そのため、今後も多くの応用例が期待されると言えるでしょう。



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・Pre-trainedModelの発展

・Pre-trainedModelの発展について

Pre-trained Model(事前学習モデル)とは、あらかじめ大量のデータで訓練された機械学習のモデルであり、これを用いることで特定のタスクでの学習が効率的に行えます。

特に近年、GPTやBERTといった新しい型の事前学習モデルが登場して以降、この領域は急速に進展しています。


一般に、新しいモデルは既存のモデルよりも高い精度でタスクを解くことが多く、そのため最新の情報に常に注目が集まっています。様々なモデルが登場する中で、注目すべきポイントの一つが、それぞれのモデルが持つ「パラメータ数」です。

例えば、初代のGPTは約1億、BERTは約3億といった具体的な数値が挙げられます。このような膨大なパラメータ数は計算資源に負担をかけるため、精度を維持しつつ効率的に動作させる新たなモデルが続々と提案されています。


・Pre-trainedModelの発展のポイント

  • パラメータ数の規模

    • GPT: 約1億

      • GPTの初代モデルでは約1億のパラメータ数を有しているます。この規模でも多くのNLPタスクで高い性能を発揮する。

    • BERT: 約3億

      • BERTモデルはGPTよりも更に多い約3億のパラメータ数で設計されているます。これにより、文脈理解に特化した高い性能を持つ。

  • パラメータ数を削減したモデル

    • ALBERT:BERTの派生形で、パラメータ数を削減しながらも性能を維持する工夫がされている。

    • DistilBERT:元のBERTモデルからパラメータ数を効率的に削減し、計算量を減らしつつ性能を保っている。

  • パラメータ数を増加させたモデル

    • GPT-2: 約15億

      • GPT-2はGPTの後継モデルであり、約15億のパラメータ数を有することで、多くの言語生成タスクでも高い性能を達成。

    • Megatron-LM: 約83億

    • NVIDIAによって開発されたこのモデルは、非常に大規模なパラメータ数を誇り、多様なタスクでの高い精度が報告されている。

    • Turing-NLG: 約170億

    • Microsoftが開発したTuring-NLGは、これまでのモデルを大きく超える170億のパラメータ数を持つことで注目されている。

    • GPT-3: 約1750億

      • GPT-3は現時点で最も大規模なパラメータ数を持ち、多様な言語生成タスクで非常に高い精度を達成。

  • パラメータ数だけでなく用途も拡大

    • GPT-3: 様々な言語生成タスクに対応

      • GPT-3はその大きなパラメータ数を活かし、多くの言語生成タスクで高い性能を持っている。

    • VisionTransformer(ViT): 画像処理分野への応用

      • ViTはトランスフォーマー構造を画像処理に応用したもので、従来のCNNを用いない新しいアプローチとして注目されている。


事前学習モデルの発展は非常に速く、新たなモデルが続々と登場しています。これによって、多様な応用が可能となり、その影響範囲も日々広がっています。パラメータ数は一つの重要な指標ですが、それだけでなく、どのようなタスクに有用かという観点も重要です。

これからもこのような発展を密に追い、その応用範囲を理解していくことが、次世代の技術革新に繋がるでしょう。

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